放課後、担任から日直の仕事ついでに、と泉は机に向かっていた。明日のLHRで使うプリントを、一枚一枚丁寧に二つ折りにしてほしいと、担任から言われれば渋々とでも従うしかない。
目の前には数十枚はありそうな紙の束。一人では到底骨が折れると思い、すぐに浜田を見つけて拉致しておいたのは正解だった。嫌な顔ひとつせず、むしろ楽しげな口調で尽きない会話を提供してくれる浜田のおかげで、単調な作業だというのにここまで少しも苦にはならずにすんでいた。
しかし、気の緩みは怪我のもと。浜田の話に気を取られていた泉は、人差し指の指先を思いっきり紙で切ってしまった。
「いって…ッ」
「なに、切った?」
小さく呻く泉に、すぐさま反応する浜田。
「おー、ばっさり。うわ、結構深けぇ」
「眺めてる場合じゃないっしょ。ほら、かしなよ」
しげしげと切り口から血が溢れ出す様子を眺めていた泉。そんな危機感のない泉の手を取った浜田は、赤く滲み出した箇所へ躊躇いなく唇を寄せ、ちゅ、と軽く吸い上げた。チリ、と僅かな鋭い痛みが走り、思わず泉は片眉を寄せる。
「浜田…」
「んぅ?」
泉の指先に唇を付けたままで、浜田は視線だけ泉に向けた。
「お前、昼に餃子食ってなかった?」
今のこの状況でどうしたらそんな話題になるのか解らず、浜田は数回瞬きをするとゆっくり泉の手を放す。
「う、うん。食ったけど」
読み取れない泉の視線におずおずと答える浜田。それを聞いた途端、泉は短くタメ息を吐き、誰に言うともなくぼやいた。
「…手ぇ洗ってくっかなー」
そしてやれやれどっこらしょ、とすっかり根付いてしまっていた腰を上げ、両手を後頭部で組むと浜田を一人残し教室を後にした。
「え、ちょ、ちゃんと歯磨いたってば!泉ぃ!?」
廊下にまで聞こえてくる浜田の悲痛の叫びを背にしながら歩く泉の頬は赤く、けれど顔は怒っているように見える。
(バカじゃねぇのアイツ!素でこんなことするヤツがあるかよ!?だからタラシとか言われんだっつーの!)
ドスドスと地を踏む足は手洗い場で止まり、捻った蛇口から流れ出る冷たい水を手に浴びせる。が、それでも消えようとしない浜田の唇の感触に堪らずぎゅう、と目を瞑った。
(…オレもバカだ、くそっ)
冷えた手の、熱の篭る一部分。そこに、泉は今にも泣き出しそうな顔でそっと唇を押し当てた。
>あれ?お付き合い浜泉のつもりで書き出したのに、終わってみれば泉片思いでしたという罠。
天然野郎の甘い誘惑に内心(絶対表には出さない)ドギマギしてればいいよ泉は。
今日は花田のエ/ロについて考えてました。だって恋に~の次がエ/ロなんだもの…!しっかり書くかぼんやり書くか、それよりも書く力量がないことについてはどうなんだっていう。
…とりあえず明日(やべ、日付かわった)は親子遠足なんで寝ます。早起きしてお弁当こさえんだ、よ!
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腹を満たし終えたあとの昼休み。スヤスヤと眠りにつく田島と三橋を余所に、泉だけは教室に迎え入れた栄口と話を弾ませていた。
いつからか毎週金曜日の定番となったこの光景。泉と栄口は最新のゲーム誌を机に広げ、あれこれ議論するのだ。
「泉が気になってたやつ評価Cじゃん」
「げ、まじで?アニキにもボロクソ言われたんだよなー」
「なんかシステムがイマイチらしいね。…あ、これ価格決まったんだ」
「どれ?」
「これ。つーか高っ!」
「それ限定版じゃね?」
ポンポンと繰り広げられる会話に、泉がまるで子供のように笑う。自分に見せるのとはまたちがった顔をする、泉が栄口といるこの時間が浜田は好きだった。
(あーあ、笑いすぎて涙出てんじゃん。いいな、あの顔)
雑誌の影からバレないようにそっと泉を眺める。それだけで浜田は幸せな気持ちで満たされるのだった。
>相方からねだられた泉と栄口のツーショット。プラス浜泉。
「泉!大丈夫か!?」
バタンッとけたたましい音と共に保健室のドアが開く。そこには息を切らし、金髪を乱した浜田が立っていた。
「は?」
「え?…怪我したって、」
息も絶え絶えな浜田と、浜田の仰々しさに眉を寄せる泉。
チームごとに別れていた体育の時間、泉が怪我をして保健室に行ったと田島から聞いたのはついさっきの出来事。
「なんとも…ないの?」
「ちょっと擦りむいて血が出ただけ。どーせまた大袈裟に聞いたんだろ」
そう言って泉は、よっ、と大きめな絆創膏を貼った右足をのせていた丸椅子から下に下ろした。
「なんだ、よかった」
いつもと変わりない泉に心の底から安堵した浜田は、椅子に座ったままの泉の横にしゃがみ込み、大きく息をついた。
「ったく、お前は心配性すぎんだよ」
ゆらゆらと腰元で揺れる金髪に、泉はゴツンと一発活を入れてやった。
バタンッとけたたましい音と共に保健室のドアが開く。そこには息を切らし、金髪を乱した浜田が立っていた。
「は?」
「え?…怪我したって、」
息も絶え絶えな浜田と、浜田の仰々しさに眉を寄せる泉。
チームごとに別れていた体育の時間、泉が怪我をして保健室に行ったと田島から聞いたのはついさっきの出来事。
「なんとも…ないの?」
「ちょっと擦りむいて血が出ただけ。どーせまた大袈裟に聞いたんだろ」
そう言って泉は、よっ、と大きめな絆創膏を貼った右足をのせていた丸椅子から下に下ろした。
「なんだ、よかった」
いつもと変わりない泉に心の底から安堵した浜田は、椅子に座ったままの泉の横にしゃがみ込み、大きく息をついた。
「ったく、お前は心配性すぎんだよ」
ゆらゆらと腰元で揺れる金髪に、泉はゴツンと一発活を入れてやった。