母親が作ってくれた弁当に加え、購買で買ってきた惣菜パンを二つたいらげ、締めはいつものパック牛乳。満たされた胃袋に満足した泉だったが、残念な事にその機嫌は十秒と持たなかった。
「うっわ、最悪……」
先ほどからムニムニと携帯を弄っていた指先が止まったと同時に、泉の眉間にはあっという間に皺が集まった。真っ暗になったディスプレイを見つめながら、昨夜寝る前に充電し忘れていた事を思い出す。浜田とのメールのやり取りが余りにも長すぎて途中で寝落ちしてしまったからだ。
「なにー?」
その原因からの能天気な相槌に多少の怒りは買ったが、ここは人として、奥歯を噛み締めなんとか八つ当たりをする事は免れた。
「携帯の充電切れた。帰りに母親からパシリメールくるってのに。うあー、まじヤベー!」
このままでは確実に母親から浴びせられるであろう冷ややかな視線、それを想像しただけで身の毛がよだつ。精神に訴え掛けるよりもまだ怒ってくれた方がよっぽど楽だというのに。そういう泉も棚上げできたものではないが。
藁にも縋る思いで鞄の中を漁ってみたが、そう易々と大人しくなった携帯を復活させてくれるようなアイテムが入っている筈もなく。いよいよどうしたものか、と泉がうな垂れかけたその時、沢山入っていた口の中のモノをようやく飲み込んだ三橋が口を開いた。
「い、泉くん。阿部くん が、持ってる よ! じゅ う電器」
「まじで!? 阿部と携帯会社一緒で良かったぁ! まだメシ食ってっかなアイツ」
寝られる前に行かないとまずい。泉がガタンと椅子から腰を浮かせると、それよりも先に田島が動いた。
「はいはい! オレもらってきてやるよ!」
「オ、オレも 行く!」
「え、まっ、お前ら……っ!」
これまで黙々と食事を済ませていた田島だったが為に、ここへきての性急な行動に泉は鳩が豆鉄砲を喰らったようになってしまった。それ故、簡単に見過ごす形となってしまい、挙句三橋まで付いて行く始末。二人に向かって伸ばされた泉の手は空しく残され、口はあんぐりと開いていた。
「うーん、素晴らしい俊足。良かったじゃん、行く手間省けて」
「バカヤロウ! こっちはダシに使われた気分だっての! 畜生!!」
浜田の能天気な発言に、今度は容赦なく机に拳をぶつける泉だった。
>どうせアイツらに会いたいだけだろ!!
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どうも、鼻風邪を引きました僕です。連休中に悪化するとかほんと勘弁……!
今日は何か書きたいなー、とたいして考えもせずにキーボードをパチパチしてみたらこんなん出来ました。何も練らずに書くとどうしても泉が出張るようです。
9組では浜泉がおとんとおかん、田島と三橋はその子供、こんなポジションが好きです。二人の世話を焼いて奮闘している泉を優しい目(ほんとは何も考えてない)で見守る浜田。うん、泉頑張れ!