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雑記、妄想メモ、拍手レス
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好きだ、と告白したら、うん、と言ってくれた。
あの日から、田島との所謂お付き合いが始まったものだと思っていたのだけれど。もしかしたら思い違いだったのかもしれない、と花井が思うまでにそう時間はかからなかった。
「あ、悪ぃその時間寝てた」
「オレ三橋ンち寄ってくから」
「へ? 送るって、なんで?」
田島の花井への態度は告白する前と何ら変わりなく、恋人っぽさは愚か、好きと思ってもらえているのかも疑わしい。つまりは花井の一方通行なのだ、何もかもが。
よくよく考えてみれば、告白の返事としてあれは成り立っていたのだろうか。うん、と言った田島がひどく嬉しそうに笑ったものだから、それ以上の言葉なんて必要ないと思ったのだけれど。
こんな思いをするぐらいならきちんとした言葉をもらっておけばよかったと深い溜め息を吐いた花井は、綺麗に畳んだアンダーを込み合っているバッグの中へ少し強引に押し込んだ。と同時にカサ、と小さな音がした。
「ん?」 
なんだ? 花井はバッグの中がよく見えるように開け口を大きく開く。アンダーとタオルの間に音の出所が挟まっていた。
端がくにゃりと折れたプロ野球のナイター観戦チケット。そういえば野球に興味のない父親から今朝出掛けに手渡されていたのを思い出す。友達とでも行ってきなさい、そう言われて真っ先に田島の顔が浮かんだ。
けれど、ナイター観戦なんてオレらの初デートにピッタリじゃないか、なんて考えられるほどの心の余裕は今の花井にはない。
チラリと田島を伺えば、水谷と泉と一緒になって憎らしいぐらいの眩しい笑顔を浮かべはしゃいでいた。

帰り道、コンビニに向かう気力もなかった花井は、皆と早々に別れ一人落ち着いた。かのように思えた。
「なー、腹でもいてーの?」
「た、田島!?」
「今日ずっと元気なくね?」
「……!」
眉間に皺を寄せ、いつの間にか一緒に残っていた田島が花井の顔をひょいと覗き込む。田島が今日一日の花井の行動を見てくれていた事がどうしようもなく嬉しく思え、噛み締めている奥歯を緩めたら一緒になって涙腺まで緩んでしまいそうだ。
花井はそっと手を上げ大丈夫だ、とだけ言葉を搾り出す。
「そ? って、何か落としたぞ」
ポトリと地面に落ちたのは、ポケットに突っ込んでいた手を出した時、一緒になって出てきてしまった例のチケットだった。拾い上げた田島が紙面上に書かれている文字を読む前に、花井がその内容を明かす。
「ああ、それナイターの……」
「ナイター!?」
ナイターと聞いた途端、田島のテンションがガッ、と上がったのがすぐにわかった。月明かりと街灯によって映し出されているその瞳は、キラキラというよりもギラギラと光って見えた。
「……行く、か?」
田島の勢いに飲まれたのもある。何も考えずに言葉が口を吐いた。
「マジで!? 行く行く!!」
オレ、実はナイターって一回しか行ったことなくってさぁ。そう言った田島は信じられないほどの笑みを顔中に浮かべていた。部室で見た、水谷達とはしゃいでいた時の笑顔とは比べものにならなくて、花井は呆然と見惚れていた。
「つうかさ、ナイターが初デートとかいかにもオレららしいよな」
「……え?」
「………え、あれ? オレらって付き合ってんじゃねーの?」
衝撃的な発言に花井の口は開いたまま、ぱくぱくと動かすしか出来ない。それを否定と受け取ったらしい田島は顔を赤らめ、興奮気味に捲くし立てた。
「え、ええ? もしかしてオレの勘違い!? うっわ、なんだよすっげー恥ずかしい……!!」
「え、ちょ、まっ、ちが……!」
「一人で浮かれてアホみてぇじゃんオレ!」
「だから違うっての! 聞け!」
ゴン、と田島の脳天から乾いた音が奏でられた。花井の鉄拳によって。
「花井、イタイ……」
「……悪ぃ」
殴った事は悪かったと思っても、一気にごちゃごちゃしてしまった脳内を花井はとにかく整理したかった。そして少しだけ整理してみてわかったのは、花井の想いが一方的なんかではなかったということ。
ちゃんと伝わってたんだな、解り辛い、が。花井の顔に自然と笑みが浮かび上がってきた。
「花井?」
「田島。もう一回、告白からやり直していいか」
今なら自身を持って言えると思って言ったのだけれど、高揚してしまった気持ちが田島の言葉よりも先にそれを紡ぎ出す方へ向かってしまい、付き合ってくれと伝えたのはそれから数十秒あとの事だった。



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おまたせしました、前回のメモの続きです。

天真爛漫な田島と一人悶々としている花井、みたいな!
田島は付き合い出したからといって何か特別な事しなきゃいけないの? 別に普通でいいんじゃん? って思ってます。逆に花井は恋人なんだからさぁ、もっとこう、あるでしょ! って。

不憫なキャプテン、可愛いよ。プーといい不憫キャラダイスキ☆

お粗末様でした!


続きからコメント返信です。
遅くなってしまいすみません><


+ + + + + + + + + +



yuzuhime様>
浜泉小話へのご感想有難うございます!
泉は男前ですねー。あたしが書く受けは皆精神的攻めなので特にそう見えてしまうのですが。。。ヘタレ攻めの寛容っぷりがたまりません。どんなことでも結局は許してしまう浜田と泉の関係性とか、萌える!
ついったーではお世話になってます^^毎日どうでもいいようなことばかり呟いてますが;
盗む技術なんてありませんのでご安心をば^^
有難うございました!



はらり様>
こんばんは^^お優しいお言葉有難うございますううううう><
ほんとコンビしてどうしようもなくてすみません……。JSBはこんなんです。
花田小話、お気に召していただけて嬉しいです!
田島が悩む話よりも花井が悩む話の方が書きやすいです^^田島はモノローグを出さない子なので、水面下で悩んで自己解決していればいいと思います。
前回は16日のメモでしたか……続きお待たせしました; 個人的にはどんでん返しを目指したつもりですので、そこいら辺を楽しんでいただけたら嬉しいです^^
有難うございました!


拍手[19回]

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プロフィール
HN:
蒼井
性別:
女性
自己紹介:
198X年5月9日(ヨーロッパ・デー)生まれ。
いつも何気ない顔で妄想してます。
☆今現在の萌
おお振り→花田、浜泉、阿三、田三
APH→仏英、英米、英日、米日
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